「なんとなく」は失敗のもと! Webサイト制作でデザインコンセプトが重要な理由

なんとなく作って、成果が出ないWebサイトの末路
Webサイト制作を検討されている企業担当者様、あるいは外注先の選定に頭を悩ませる制作会社のご担当者様。こんな風に考えていませんか?
「とりあえず、見栄えの良いWebサイトがあれば、お問い合わせが増えるだろう」
「他社のサイトが格好良いから、真似て作ってみよう」
残念ながら、このような「なんとなく」の考え方で制作を進めると、多くの場合は期待した成果を得られません。
- 時間とコストをかけたのに、誰にも響かないサイトになってしまった
- デザインが定まらず、担当者間で意見がぶつかってばかり
- 数年後にリニューアルしても、結局同じような失敗を繰り返してしまう
このような失敗は、Webサイトの「見た目」だけに囚われ、最も重要な「デザインコンセプト」が抜け落ちていることが原因です。
Webサイトを「生きた資産」に変えるデザインコンセプト
デザインコンセプトとは、単なる「見た目」を決めるものではありません。
それは、Webサイトを「企業の顔」として、ユーザーに最も効果的にメッセージを伝えるための設計図です。
この設計図をしっかり描くことで、Webサイトは単なる情報置き場ではなく、お問い合わせや売上を生み出す「生きた資産」へと変わります。
本記事では、Web制作フリーランスとして多くの企業様のWebサイト制作に携わってきた経験から、「なぜデザインコンセプトが重要なのか」、そして「誰でも実践できるその設計方法」を、具体的なステップで徹底解説します。
デザインコンセプトとは何か?なぜ必要なのか?
デザインコンセプトは「Webサイトの設計図」
デザインコンセプトとは、単なる「見た目」や「色」の話ではありません。
それは、Webサイトを制作する上で最も重要な、「誰に」「何を」「どう伝えるか」を明確にするための設計図です。
この設計図がなければ、どんなに優れたデザイナーでも、Webサイトのゴールを見失ってしまいます。
デザインコンセプトは、以下の4つの要素から成り立っています。
1.ターゲット
「誰に」情報を届けたいのかを明確にします。
年齢、性別、職業といったデモグラフィック情報だけでなく、その人のライフスタイル、悩み、興味・関心といったインサイトを深く掘り下げることが重要です。
2.ゴール
Webサイトの最終的な「目的」です。
例えば、「お問い合わせを増やす」「採用応募を増やす」「企業ブランドの信頼性を向上させる」といった、Webサイトを通じて最終的に達成したいことを定めます。
3.伝えたいメッセージ
Webサイトを通じて最も伝えたい核となるメッセージを明確にします。
例えば、「高品質なサービス」「圧倒的な専門性」「親しみやすさ」「信頼と安心」といった、ユーザーに記憶してほしい企業の強みや価値観です。
4.トーン&マナー
上記3つの要素をユーザーにどう伝えるかを決定します。
信頼感を出すために「青」を基調とするのか、親しみやすさを出すために柔らかいフォントを選ぶのかなど、見た目や言葉遣い、写真の雰囲気まで含めた一貫したルールのことです。
次のセクションでは「ターゲット」「ゴール」「伝えたいメッセージ」を1つのシートにまとめて「コンセプトシート」というかたちでアウトプットする、という手法をご紹介します。。
なぜデザインコンセプトが必要なのか?
目的の明確化と道筋を示す羅針盤となる
デザインコンセプトは、ぼんやりとしたWebサイトのイメージを、具体的なアクションに落とし込むための道しるべです。
「なんとなく格好良い」から「信頼感を伝えるために、シンプルかつ力強いデザインにする」というように、制作の目的が明確になります。
関係者間の認識を統一し、手戻りを防ぐ
クライアント、ディレクター、デザイナー、エンジニアなど、Webサイト制作に関わる全ての人が、共通の認識を持つことができます。
これにより、「イメージと違う」といった認識のズレが原因で発生する手戻りを大幅に削減し、スムーズなプロジェクト進行が可能になります。
失敗しないデザインコンセプト設計の3ステップ
デザインコンセプトの重要性は理解できたものの、「具体的にどうやって作ればいいの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
ここでは、Webサイト制作の現場で実際に私が実践している、失敗しないための具体的な3つのステップをご紹介します。
ステップ1:徹底的なヒアリングと調査で「土台」を固める
コンセプト設計は、いきなりデザイン案を考えることから始めません。
まずは、Webサイトの土台となる情報を徹底的に集めます。
- 事業内容、強み、競合優位性
- Webサイトの目的(お問い合わせ増加、ブランド力向上など)
- サービス・商品のターゲット像
- ターゲットが普段利用しているWebサイトやSNS
- 競合他社のWebサイトのデザイン、コンテンツ、強み
この段階で、クライアントと「本当に達成したいこと」を深く掘り下げ、認識をすり合わせることが最も重要です。
ステップ2:コンセプトの言語化と可視化で「イメージ」を共有する
集めた情報を基に、具体的なコンセプトに落とし込んでいきます。
このとき、言語化と可視化の両方を行うことで、関係者間のイメージのズレを防ぎます。
- 目的: Webサイトを通じて何を達成したいのか、具体的なゴールを明確にします。
- ターゲット: ペルソナ(架空の人物像)を設定し、その人の悩みやゴールを明記。
- キーワード: 「いつ」「どこで」「誰に」「何を」「どのように」を基に、Webサイトの目的とターゲットを言語化します。
- コンセプト文: 最後に、これらの要素をまとめた短い文章でコンセプトを表現します。
それぞれ、どの粒度まで詳細に詰めていくかは、案件の規模などにもよると思いますが、簡潔でもいいのでこれらを言語化してまとめておくと両者の認識が具体化してブレをなくすことにつながります。
ちなみに私は下記の講座を受講した際に配布されていたコンセプトシートを自分なりに使いやすいレイアウトに変更して使用させてもらっています。
こんな感じです。
↓

コンセプト設定の一例
架空のハウスメーカーを例にコンセプト案を考えてみましょう。
例えばクライアントへのヒアリング結果から下記のような課題が浮き彫りになりました。
課題
現行Webサイトは社内で作成したものでデザインも古く感じられ、ページ間のリンクもちぐはぐでサイトの導線設計が破綻している。
クライアントがこれらを「課題」として捉えているということは、この課題の先に果たしたい「目的」があるのだろうと予想できます。
その課題を予測して提示し、クライアントとの合意形成をはかる、ということがこのコンセプトシートの最大の目的と言ってもいいかもしれません。
今回はあくまでも一例ということで、この課題に対してのWebサイトリニューアル案件ということを想定して、ご都合主義的ではありますが下記のようにコンセプトシートを設定してみました。

コンセプトシートは、とにかく単純明快さが重要です。
もちろん課題設定も目的もサンプルであり、こちらの作りやすいように作っているので、実際の案件ではこう簡単には決まらないでしょう。
ですが、なんとなくのイメージとして「こんな感じのもをクライアントと共有していけば良いのか!」という参考程度にはなるのではないでしょうか?
「老舗としての信頼を現代風のデザインに落とし込みつつ、且つシンプルに伝わる導線設計を目指す」というデザインの方向性をクライアントとの間で認識共有できそうではないですか?
ステップ3:デザインガイドラインへの落とし込み
コンセプトが固まったら、いよいよ具体的なデザインに落とし込んでいきます。
この段階では、単にデザイン案を提示するだけでなく、なぜそのデザインにしたのか、コンセプトに基づいた理由を明確に説明します。
トンマナの統一
ロゴ、キービジュアル、フォント、カラーパレットなどを規定し、Webサイト全体で一貫したルールを定めます。
制作の効率化
事前にガイドラインを決めておくことで、制作途中で「このページだけ雰囲気が違う…」といったズレを防ぎ、制作スピードも向上します。
これらのステップを踏むことで、「なんとなく」ではない、明確な意図を持ったWebサイト制作が可能になります。
デザインコンセプトが制作効率と費用対効果を高める理由
デザインコンセプトは、Webサイトの成果を向上させるだけでなく、制作プロセスそのものにも大きなメリットをもたらします。ここでは、なぜコンセプト設計が効率的で費用対効果の高い制作につながるのかを解説します。
手戻りの激減と制作スピードの向上
デザインコンセプトがない状態で制作を進めると、以下のような非効率な事態が頻繁に起こります。
- 「やっぱりこの色じゃない」「もっと違う雰囲気に」といった、後からの大幅なデザイン変更
- 関係者間で意見がまとまらず、デザイン案が何度もやり直しになる
- クライアントへの提案時に、デザインの意図をうまく説明できず、修正依頼が増える
しかし、明確なコンセプトがあれば、プロジェクトの初期段階で「Webサイトの軸」が定まります。
これにより、デザインの方向性に関する議論がスムーズになり、手戻りが激減。
結果として、制作期間を短縮し、無駄なコストを抑えることができます。
リニューアル時の資産となる
Webサイトは、一度作ったら終わりではありません。数年後には必ずリニューアルの時期が来ます。
その際、しっかりとしたデザインコンセプトがあれば、それはWebサイトの重要な資産となります。
コンセプトが明確であれば、リニューアルの際も「次は〇〇を強化しよう」「現在のコンセプトに沿って新しい要素を追加しよう」といった、ブレのない判断が可能になります。
ゼロからすべてを考え直す必要がないため、リニューアルにかかる時間と費用を大幅に削減できます。
マーケティング効果の最大化
デザインコンセプトは、Webサイト単体での効果だけでなく、企業全体のマーケティング活動にも寄与します。
Webサイトのデザインが、チラシ、パンフレット、SNSなど、他のマーケティングツールと一貫したコンセプトで統一されていれば、ユーザーはどのチャネルから接触しても同じブランドイメージを認識します。
これにより、ブランドの信頼性が高まり、マーケティング効果を最大化することができます。
まとめ
Webサイト制作におけるデザインコンセプトの重要性について、ここまで深く掘り下げてきました。
「なんとなく」で作るWebサイトが、時間やコストの無駄につながってしまう一方で、明確なコンセプトを持って制作されたWebサイトは、企業の目的を達成する強力な「資産」となります。
デザインコンセプトを設計することは、Webサイトの「顔」を決め、ユーザーに届けるべきメッセージを明確にし、制作プロセスを効率化する、最も重要な工程です。
もし今、あなたのWebサイトが期待通りの成果を上げていないと感じているなら、それは見た目の問題ではなく、デザインコンセプトに課題があるのかもしれません。
そして、これからWebサイトを制作しようと考えているのであれば、まずは「なんとなく」から卒業し、デザインコンセプトの設計から始めることを強くお勧めします。
デザインコンセプトの設計は、専門的な知識や客観的な視点が必要となります。
あなたの事業の強みを引き出し、最も効果的な「顔」を作り上げるお手伝いをいたします。
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